手探り
あらい

夜目を利かす空缶の欠伸は止まりそうもない。
おまけについてきた可愛らしいカーボン紙
適度に爪で惹くとたのおしくもある。
何気無しのへのへのもへじ
舌を伸ばしている、漆黒の猫、みたいな。
のび、ひとつ

転がり続けるビール瓶は産卵して顔を顰めた
蒲公英になりたい綿飴は隅っこで風と踊り
今日もまた砕くべき日常に靴跡を合わせ
アパートの柵にかまけた引き出し、洗いざらしの生き様
雑なポストは腹いっぱいでも干されたシーツの滲みも冷えて、
盗れやしない、本当に幽霊屋敷。

喉が乾いているから、水に浸して見る、渋餓鬼のマグ
程解いた てのひらから 吸い寄せたのはどちら様か

雨は降りもしない。

強がっているのか、なんて表面はかたいガムみたい
如何わしい黒板を引っ掻いた、蝕まれた歯ぎしりが、
白々しく隠された朝日と共に潤みだす月光に罪を被せ

眠れない花火は夜通し打ち上がり
渚に差し込むマッコウクジラの背には、今、
発芽したばかりのカノジョが、わらいかける罪だ

季節の繋ぎ目を、知らないだけの世界の裏側にて
クロスステッチは生み出される。何度でも過去に戻す。
川のせせらぎに返還する、てふてふと魅せる紅葉が跳ねる
みながあいしてやまない、モルフォの眼光を紙幣に透かして
宝剣を 奪い合う、さだめとも、あたまがいたい。

天地が兆しを致すとやはり洪水が廊下を浸し流される苑の海に
真新しいカンテラを持ち現れる時の簒奪者はえらく細く緩い。

瞬きの合間を滑り込み、光の吐瀉を促していく
鏡の前の素人を演じてみて、色を落したカメレオン
鼻緒が切れたような曖昧が転び方を魅せて、
居心地の悪さを遺している吐瀉は鍵を隠しては
きっと愛に飢えてる時計を巻き戻し続ける。

ただいまとあかりをともしても。
落胆の声を発して、消え失せる他にない、
擬態する文様すら忘れて終う、幽かな残香。


自由詩 手探り Copyright あらい 2020-05-27 21:40:11縦
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