This is a pen
やまうちあつし

わたしのペンは退屈している
わたしのペンは雲でできている
わたしのペンは折ると血が出る
わたしのペンには雨が降っている
わたしのペンは時に稲光る
わたしのペンは黒ヒョウに似ている
わたしのペンは夕焼けより赤い
わたしのペンは闇に溶け出す
わたしのペンは星空をつつく
わたしのペンは冥王星に届く
そのハート型の蒙古斑をなぞる
わたしのペンは恋人を救えない
わたしのペンは幽霊より白い
わたしのペンはユニコーンの角
わたしのペンはスフィンクスの問い
わたしのペンはサモトラケのニケ
わたしのペンはゲルニカのニカ
わたしのペンはわたしの祖父だ
わたしのペンはわたしの祖母だ
わたしのペンは何処かの誰か
わたしのペンはわたしだけでは決してない
わたしのペンには日曜日がない
わたしのペンには月曜日もない
わたしのペンは沈黙を恐れる
わたしのペンは空白を欲する
わたしのペンはカミを求める
わたしのペンはカミを忘れる
そして思い出す
わたしのペンはコンビニで売っている


自由詩 This is a pen Copyright やまうちあつし 2020-05-27 12:59:34縦
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