錆た門扉を叩く
あらい

コンビニのスキマに花屋がある。
だれも気づかないが傷ついた者が営む
代々伝わる一輪の薔薇の行く先へ。

穴だらけのスポンジと刺さり、生贄と栄える、
クサリカケタ海馬に喰まれている、水死体。あなたのことです。

私はと云えば、口笛を吹きながら帰りを待っている。

夕餉足繁く薫る風に知らぬ。人にも満たない命ですから、
流してくれている、その裸電燈の橙だけは認識しているみたいだ。

片時も狂いない青ざめた公衆電話、揺れるマーガレット
冷々と泣き、きっかり喚くもの、さよなら 烏の子
蝙蝠傘で庇っては、雨に濡れても。うたはきこえない

然し、手に取っては何にも成りません。
微笑みかける、花開いたスカートのプリーツ、
ひとりやふたり、裏地に寄生して齷齪と繁殖をする。

我々自身、地雷の翳を踏んでいるとも。
扉は破壊するもの、未来は暗転を、草す
光に置き換えて、正史となった。野端の艷

もう大分そうやって桔梗の花は輪廻を繰り返し、
徐々に頂上に近づいていく。風に干された一枚のハンカチが
旅路の果て、この世の全てを覆い隠して、猥談を作り出す

正天は瞬ぐ、眩しからずや、誑すもの、
段々の螺旋に穴は空いて、宿仮の骸が蔓延ると痴る

蜘蛛の糸を紡いで適度に温めたものをハートの型に流し込む。
形成された土気色の甘い事、「あなた 」と名前を授けても、
差し支えはなく摂理は誤りを持ち得ない、そんなもの、
人の性。今時分に治まる.


自由詩 錆た門扉を叩く Copyright あらい 2020-05-26 20:44:31
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