恋昇り挿し詩2「いつか収束する今日へ」
トビラ

私は割れた花瓶に水を注ぐ
花瓶はいつまでも満たされない

俺は目隠しをして
手に触れた物を壊す
壊れたくなかったら
俺に近寄らない方がいい

私は心の裏側を読む

俺は何もない
俺は空っぽな計算機だ

僕は空を見る
夕方から夜へ
移り変わっていく

 *

私は割れた花瓶に水を注ぐ
花瓶はいつまでも満たされない
花は枯れてしまった

俺は壊す
何を壊しているのか
知らないままで

私は闇を見る
そんなもの見たくなかった

俺には何もない
俺はただの空っぽの計算機だ

僕は夜空を見る
星はまたたき
月は表情を変えて
そこにある

 *

私は花瓶に水を注ぐのをやめた
いつまでも満たされないから

俺は壊す
俺は
何を壊しているのかわからない

私はもう何も見たくない
ただ一度
光を見てみたかった

俺には何もない
俺はやっぱり
空っぽの計算機だ

僕は自分の意味を思う
その意図を思う
僕としての在り方を問う

 *

私は
世の中には
新しい花瓶があることを知った
今度は満たせるかもしれない
満たされるかもしれない
花を生かせるかもしれない

俺は目隠しを外した
もう二度と
大切な物を壊したくなかったから

私は光を見た
もう光だけ
見て生きたい

俺は間違ってた
俺は
空っぽなんかじゃなかった

僕は笑う
笑うことは
ああ
こんなにも簡単なことだった


散文(批評随筆小説等) 恋昇り挿し詩2「いつか収束する今日へ」 Copyright トビラ 2020-05-23 20:19:12
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