水光片
木立 悟






氷山にあいた窓に
鳥と気球と蝶がいて
空を見たまま飛べないでいる
ひとつ 逆さのアルファベット


雨の隣には雨
その隣にも雨
雨のむこうの雨
雨のふりをした雨


ひとつめのボタンを
声に変えながら
まばたきの次のまばたきを追う
水の行方の重なりを追う


鳥が
光のかたちになり
しばらくのあいだ
鳴いている


こだま きざし
ひびき わかれ
重なる 重なる
五度めの終わり


光の衣 落ちては落ちて
夜の端をかすかに照らし
着ては脱ぎ着ては脱ぎ
明るくまぶしくひとり


ちぎれたものらが降り積もり
ちぎれる前の姿に立ち上がり
空を空に纏いながら
変わりつづける色を見つめる


かけらを手に かけらを口に
かけらの集まりの羽を背に
崩れはじめた氷山の窓から
雷鳴のなかを飛び立ってゆく


























自由詩 水光片 Copyright 木立 悟 2020-05-22 21:02:55縦
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