ドライブ
たもつ

 
 
妻は昨日より少し細長くなって
収まる場所がまだ見つからない
その隣では去年より手足の短くなった娘が
似合わないチェックの服ではしゃいでいる
息子はといえば三日前からトランクに入ったきりで
どこがどうなっているのかよくわからない
ハンドルを握る両手に浮かんだ静脈の青さを舐めていると
市街地の渋滞を抜けるのに数時間かかった
その間大安売りという看板をいくつか見たが
僕らに必要なものはいつものように何一つ大安売りではない
それでも、今日はお乗換えをしなくていいのね、と
お乗換えが嫌いな娘はますます楽しくなる
妻はやっと収まる場所を見つけ
静かな寝息をたてている
お得意の身体の一部が消えるマジックを
息子は行った先で見せてくれればいい
ありったけのお握りやサンドイッチをバスケットにつめて
早春の海岸通りを走るころになると
それはそれは
ピクニックのようなドライブである
 
 


自由詩 ドライブ Copyright たもつ 2020-05-17 11:37:58
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