古い写真は
こたきひろし

写真は嫌いだった
カメラを向けられてシャッターをきられるのは嫌いだった
私は顔や姿に自信がない
そればかりではない
衣服では誤魔化しきれない内面の貧弱さ

独り身の時代
異性は私を避けて通りすぎていった

寡黙とは違う
無口で地味で目立たない存在
そして異性からばかりではなく
同性からさえも生理的に受け入れて貰えない存在

いつもどこにいても
いったい何を考えているのか自分自身にも見えてない存在
一人ぼっちの存在
けして狼にはなれない

学校の教室の中にも
一人か二人はいたよね
周囲の空気にけして溶け込めない存在
自然と集団から隔離されて相手にされない存在

その一人か二人は
お互いが似通っている事を強く意識していながら
お互いの存在をかたくなに拒否してしまうんだ
不運にも私はそんな存在だったのは事実

虐められやすい体質
虐められれても誰からも同情されない存在

救いの主は何処からもあらわれず
虐められて当然の存在

教室内に鉛色のように立ち込めるストレスやフラストレーションの渦
それを中和させてくれる為に必要な悪

救いの主は何処からもあらわれず
虐められて当然の存在

自ら群れを外れているのか
先天的に群れから外れるように仕組まれているのかはわからない
わからないけど
底なしの沼で苦しみ悩み続けてしまう存在

哀れで憐れで可哀想な羊は
周囲の生け贄にされる存在

そしてそんな存在の避難場所は
昼休みの図書室
でもその読書欲はカモフラージュ

そしてそんな存在は
人にかくれて暗黒色のノートに詩なるものを書きためていたりする

古い写真は嫌いだった
写真は新しいならいい

女とその女が産んで育てた二人の娘
私は父親としてシャッターをきられた
新しい写真


自由詩 古い写真は Copyright こたきひろし 2020-05-16 08:24:10
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