デュカットは静かだ/即興ゴルコンダ(仮)投稿
こうだたけみ
その背中には羽
曇天模様の空の下
ツバメのように飛ぶんだと
低く、ひくく
腰をかがめてそうっと進む
ずしりと重いのは
右か左か誰の足
船が着いてかれこれ一時間は経っただろう。
上から下まで探したところで灯台には何も見
つかりゃしない。レイ・ブラッドベリが「音
を作ってやろう」と言った時から空想をやめ
られない。何かが詰まったままのおもちゃの
ラッパを吹くような、寝返りを打つとたまに
通る鼻炎持ちの鼻の穴のような、
音
教会のピロティはひとたびそれをとらえると
わんわんと反響する。腕についていた毛虫を
ゴムのパチンコで弾いてくれた男の子にお礼
を言えなかったと悔やむみたいにしつこく、
しつこく。だからここではあらゆるボールを
投げるのを禁じられているのに、
音
肺から出た空気がどのようにして息から声に
なるのかは知らない。けれども声帯が弱まる
と誤嚥が増えそうな気がしてこわいから目に
ついた文字を手当たり次第読み上げていた。
「デュカットは怒りっぽい」とか「マッカー
サーはお祈りをしている」とか、
音
彼らは忽然と消えたのではなく毅然として隠
れたのだとしたら。なんのために? ねえ、
後から来た灯台守たちはずっと賑やかにして
いられたのかな? 楽器を鳴らしたり手を叩
いたり足踏みをしたりして。三人しかいない
のに。三人しかいなかったのに、
音
それは少なくともデュカットじゃないよ。
彼は、ずっと静かだ。