風 煙 灰
木立 悟







花が花を追い
光が光を追う
互いが互いであることを忘れ
互いが互いをくりかえす


雨は雨
ほつれた糸
珠つなぐ音
雨と雨


何も無さをついばむ鴉
白から白へ ひとりだけ落ち
何も思わず 
ただ目の前をついばんでいる


水は水の逆をゆき
渦と渦はどこまでも争う
静けさの塊が
騒がしさの内に増えてゆく


鏡の仮面に映る風景
檻のなかの白い匂い
途切れた径を引き返すとき
いつも見えるそこに無い雨


兵士が 海を見つめて動かない
空は地に近づき
地は空に黒を吐く
蒼を藍を紺を吐く


忘れた言葉の墓がつづき
川を埋め海を埋め なおもつづく
原のはざまに見え隠れする魚
鉱から染み出た水たまりに棲む


見ず知らずの季節にも
ふいに耳を噛まれたりする
砂の底から現われる火
花と光を 花と光に燃しては帰す


















自由詩 風 煙 灰 Copyright 木立 悟 2020-05-09 10:44:14
notebook Home 戻る  過去 未来