やさしいことばで君をえがく
atsuchan69

やさしいことばで君をえがく
長い髪の、
 今は
とても みじかく切ってしまって

君が泣いている
君が笑っている
でも本当は、
ひとり静かに怒っている
縁側でひざを抱いて座ったまま

そしてセリフのない、
暗いことばで
もう、
忘れたいよォ という

ダントンを、
刎ねたギロチン台みたく
置き去りにされた
――街。

人形の千切れた白い腕が
朽ちた瓦礫の隙間からはみだして
破れた日の丸や
壊れた町のイメージが
夕日で赤く染まって

君が泣いている
君が笑っている
でも本当は、
ひとり静かに怒っている
縁側でひざを抱いて座ったまま

蒸せた夏の、
黄昏に染まる縁側で
誰にも消せない火をぼうっと眺め、
君は ひざを抱いて座っている

そしてセリフのない、
暗いことばで
もう、
忘れたいよォ という


自由詩 やさしいことばで君をえがく Copyright atsuchan69 2020-05-06 07:38:52
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