ヒバチ
あらい

暗がりの瞼にやきついた 焔は揺らめき
もう遅いのでしょう 手の鳴るほうへ
死した真理(毬)は なにやかな 惹かれゆく
弾みない琴の歩が なして 低い河へ迎えらるる
蜘蛛の子が列を生し 錆びた蔓を下り降クダらん
砂糖を形成している 死角かもしれない

だがまだ準備できてないの
もたもたと風が零したのは

水飴 ざらめ 火蜂

漕ぎ得る程にあいに く、あつくなつく
肌を柔らかくヤク訳:根底に生を尽く

うたたねもはじまろう
厠の傍は 私 煌々と照らす少しの間柄
小坊主が行き交う 喧騒は揺るがないもの

ひは ほのくらく あまくは
はせるねが ここちよい
ちくりと しめす あゝ のみだ

彼方の柔らかな鼾 留まることの無い未来 
信じれば天の底に向かい合う
みすぼらしい円居を叩く あまりに痩せた風の音《ね》
それでも、真夜中の葉脈に這わせる
せせらぎに染まりゆくひの 刹那
雫は平に落ちましょう

元は壊れ物であった 砕け散った欠けらも無い
あわれな亀裂すら 光は透し
みうしったのか きずけないのか
片鱗の身の私では うみにかえれない。
/
たかい
した
ひとっこ
ししか
いない
/
自由であれ無かろうて、空はまるで生き写しの私を云う。
見上げる余裕があるならば、
否、底に救いが見当たらないと、天を仰ぐか、
心はとうに決まって鋳る
きっかけとも、時の悪戯に、待ちくたびれた、
私はわからないまま、ここまで来たと知ら占めることは、
あわれおかし、風が強く背を延ばす
こぼしたものみちにつまれり

訪ね廻る風はキセキの変わり目を探していた
爆ぜる音だけが惰性に遺る 骨は殻に生った。

そこは伽藍道のこころみ
明け六つ。為る生る
うつろうつらの残鏡に雪ぐ、空涙と綻ぶ灰とぬくもり。


自由詩 ヒバチ Copyright あらい 2020-04-29 08:17:24
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