しずく
風の化身

憂鬱な空は
まだ残っているけど
雨は慎ましく止んだ

枝先からぽとんとひとつ雫が落ちた
顔に当たると弾けて飛んだ
ちょっと冷たいけど気持ちがいい

見上げると
沢山の雫の子供たちが
木の枝先で落ちる時をじっと待っている

それを見ていた悪戯な風は
そっと近寄ると「わー」と驚かした

雫の子供たちはびっくり仰天
蜘蛛の子を散らす様に落ちてしまった

悪びれもせずに
風は涼しい顔をして何処かへ消えた

枝先だけが寂しそうに
何時までも揺れていた

枝先から落ちたのは
幼子の瞳の様に
きらきらと透き通った雫たち

雫の先に
虹を渡る明日が見えた


自由詩 しずく Copyright 風の化身 2020-04-26 16:59:51
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