ボロボロに転がれ詩人症の骸
ホロウ・シカエルボク


悪ガキども、武器を手に取れ、思考の虐殺を開始しよう、俺たちは衝動に従う、自分を突き動かすものを信じる、思考は時により、心を縛り付ける鎖になる、そんなものはもう捨てちまおう、俺たちは思考を乗り越えた野獣になる、思考と理性は、切り離せるものではないとお前は思うだろう、なに、思考だって理性だって野性の一部だ、がんじがらめの毎日の中で分離してしまっただけのことさ、自分自身を執拗に漁れば誰だってそのことに気づける、俺は気づいている、お前は気づいていない、ただそれだけのことなんだ、準備は出来たか、指先を存分に跳ねさせろ、あらん限りのイメージを投げ捨てて脳味噌をクタクタにしてしまえ、安穏としている限り見えることはない景色を目の前に引きずり出してやれ、お前はいつだってそんなものを望んでいたはずだ、欲望は常識の中にはない、わからないのか?コミュニティを維持するために築かれた悪趣味な城の中じゃ、いくら目が利いたって大事なものを見つける事なんて出来やしない、それは、思考を云々する以前の段階なのさ、お前は自分自身であるために自分自身でないものに縛られているんだ、そしてそれをアイデンティティだと心から信じている、嘆かわしいぜ、目も当てられない、都市のロボトミーはずいぶん巧妙になったものだ、そうだと気づく前にベーシック・コードが書き換えられてしまう、あてがわれたお題目を疑うことなく信じ込んでしまう、機関銃を寄こせ、死なない程度にハチの巣にしてやる、そんな思いをしなければきっと気づくことは出来ないだろう、誇り高き部品なんかに俺は話しかけたりしないぜ、陳腐な口を聞く前に自分のことを見つめ直してみるんだな、機関銃、機関銃か、思えば俺はいつだってそんなリズムを求めてきた、我知らず、自分を穴だらけにしようとしてたのかもしれないな、フレーズの弾丸は天にも昇る気持ちだぜ、一足お先に天国だ、俺はソコラヘンからお前らのことを見下ろすとするよ、なんてな、そんな気分もいつまでも続きはしない、だから果てしなく次を求めてしまうんだな、ジャンキーだって?そう言いたければ言うがいいさ、だけど俺はお前たちよりもずっと確かな目をしているだろう?そうさ、この快楽は身体を蝕んだりはしない、もしかしたら時に、心は酷くズタズタになったりするかもしれないけれど、でもそれは、必要な痛みさ、知るために与えられる痛みなんだ、血が滲むほどに耐えながら俺は何度もそんな痛みに耐えてきた、そして知ってきたんだ、それが虐殺だ、思考の、表層の己自身の、途方もなく悲惨な死にざまさ、そして、それを見下ろしているのもまた俺自身だ、矛盾だって?どこの世界に居たって矛盾なんか当り前の要素だぜ、何の筋を通そうとしているんだ、何の辻褄を合わせようとしているんだ、俺が話しているのは特定のポイントに弾を当てればいいなんて話じゃないんだぜ、所構わずぶっ放して生き残ったものを選べって話なんだ、まったくお前ってやつは、全部説明してやらないと何も理解出来ないのか?これは的確な言葉じゃない、いいか、これは的確な言葉じゃない、イメージの一部に過ぎない、現象の一部分の、瞬間的な変換に過ぎないんだ、だから、いくつもの捉え方をすることが出来る、無限の感じ方をすることが出来るんだ、その中には俺の語るイメージとほとんど同じだったり、まるでかけ離れたものだったりする解釈があるだろう、いいかい、俺にとってそれが正解かどうかなんて問題じゃない、お前がそこに至るまでにどれほどのサイコロを転がしたか、重要なのはそこだけなのさ、正解なのかどうかはそこ次第だ、それがあればお前はそこから、いくつもの正解を導き出すことが出来るだろう、正解はひとつの形を持たない、それは連続するものなんだ、連続する思考であり、連続する行動だ、即答などもってのほかだ、すぐに答えを得る者たちの薄っぺらさを恥だと思うことが出来ないのなら、お前はそこまでの人間だってことさ、さあ、武器を手に取れ、思考の虐殺を開始しよう、侮るなよ、あいつらは手強いぞ、時に俺たちを根底から揺るがすような手段を使ってくる、それは下手したら即死に繋がる、いいかい、気を抜くなよ、これは街角のバトルじゃない、生きるか死ぬかの、生死を賭けた本物の殺し合いなのさ、しかもどんなに手酷い攻撃を受けても一滴の血も流れないときてる、おまけに、完全に敗北して死んでしまったところで、傍目には誰にもそのことがわかりはしないのさ、あいつ最近書いてないな、そんなやつを探してみなよ、きっと、暗闇が乗り移ったかのような黒目で、この世にはない場所をじっと見つめているはずだから。



自由詩 ボロボロに転がれ詩人症の骸 Copyright ホロウ・シカエルボク 2020-04-26 15:14:37
notebook Home 戻る