眼を閉じてきけ
帆場蔵人

あそこで泣いているのはちいさな風の音
あそこで笑っているのもちいさな風の音
草の根分けて風の根わけてくる 風の音

風の子らが草の根わけていく
茂みや屋根を踏み鳴らしていく

坊やの手には 風ぐるま とろん
とろんと 風の根が 天をはしり
風ぐるま とろんと 地をはって

風車をまわし水車をまわして風の根は
天と地を繋ぐ柱にかわりゆくあそこで
泣いたり笑ったりしている人びとの夢

とろん とろんと 轟きながら夜をゆらす

誰が知るだろう、あの風ぐるまをまわした
風の子が、あの子守唄を運んできたのだと
あの天地を廻す車軸の回転が幼かったころ

そんな時を誰が思うだろう

夜が朝を生む、生まれて生きて死んでいく
眼が閉じられ開いていく、潮の満ち引きは
絶えることなく海へと続いている、足あと
あくび、目蓋が重くなり手からぬけおちる
風ぐるま、とろん と 吐き出して……

朝陽がとけたみずを飲む馬の鬣がゆらゆら
水面をゆらして、川底の石を擽ぐる風の音


自由詩 眼を閉じてきけ Copyright 帆場蔵人 2020-04-24 00:00:41縦
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