鬼蜘蛛と私(おにぐもとわたし)
こしごえ

鬼蜘蛛の
運命の糸で できている
巣が軒下でほのかにゆれています
この巣に掛かっている命と
今夜もゆれている私は
私と居る
鬼蜘蛛の、
ひんやりとした歌に
やわらかい耳をかたむけている
深深と

鬼蜘蛛の巣越しに
ゆっくりゆっくりと まわるように見える
星空の星星は瞬きながら ほほえんでいる

柱時計の
長針と短針が 善悪の無いほほえみと ほほえみ
それぞれの役目をしている

悪や善と言うのはヒトだけよ と 時間は一瞬じっとした。
私には悪があるからこそ善く生きたい。
善いと思うことがまるまる善いこととは限らない
それでも 命に従います それでも
それでもね ね ほ

ほおほおと近くの杉林で
ふくろう歌い始めて張りつめていた空気がしんなりする
今は黙礼をして今を通りすぎる

これらは私の住む世界のことなので
私にとっていつかのあなたは
お月さんのように遠く親しい

あなたが呼吸をしている未来に 何気ない今のことを忘れるだろう私の
覚えていることだけではなく
今をつくるのは さまざまな今よ
私のいない未来にも
この鬼蜘蛛の歌はそっと命に触れつつ軒下でほのかにゆれています。
命は原初から欠けている 故に、存在していることが ありがたい

感覚器官と共にある魂で気付くことができる命を
鬼蜘蛛は食べて糸にする
命は 命に支えられる命命を支える命魂という命
連なり
私と
命を見つめる
鬼蜘蛛






自由詩 鬼蜘蛛と私(おにぐもとわたし) Copyright こしごえ 2020-04-22 08:03:41
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