ぼろぼろのつばさ 4'
青色銀河団

[銀波]

あおじろいいのちが
誰かの胸にともる頃
あなたの耳のなかに
夕暮が入りこみ耳の
中で星たちはしみわ
たる水の音を聞き入
りながら瞬き始める




[tears]

小鳥はなみだ。海岸はなみだ。春はなみだ。ことばはなみだ。

きみはなみだ
ひとりぼっちのなみだ




[birth of stars]

野原のまんなかで天体の運行を司る
君は
音楽の酔っ払いのミューズ
君が奏でる音楽にあわせ
純粋な植物から星々が生まれる

かつて遠く旅した星々の記憶が
鮮やかに甦る




[ほんとにほしいもの]

ほんとにほしいものは
どこをさがしてもうってなかった

ともだちもりょうしんもあのひとも
わたしのほんとのきもちにきづきもしない

ほんとは
ことばなんていらないのに
ほんとは
てをそっとにぎってくれるだけでいいのに
ほんとは
ただそばにいてくれるだけでいいのに

どうしてこんなに
むねがすかすかするんだろ

きっとあした
わたしがしんでも
せかいは
なにも
かわらない




[question]

先生わたしはいつになったら幸せになれますか。先生わたしは
からだが半分透き通っていなくなってしまうときがあるんので
すがどうしたらよいですか。先生人のためになることしたいで
すか。先生人に迷惑をかけちゃいけませんか。先生毎日が苦し
くてしかたないのですがどうしたらいいですか。先生大人にな
ったら何かいいことありますか。先生どうして死んだらいけな
いのですか。先生生きていくって汚れていくことですか。先生
わたしがいません。先生どうしたらいいですか。




[reflection]

ガラスの家に住み
ガラスの椅子に座り
ガラスのテーブルに着き
ガラスの食器で
食事をする
ガラスに映るのは誰?
一粒のガラスの涙が
こぼれると
ガラスの食器とガラスのテーブルとガラスの椅子とガラスの家が粉々に砕けた
幾千幾万ものガラスのかけらに
幾千幾万もの私が写っている




[hello goodby]

ハロー ハロー


グッドバイ グッドバイ




[future]

未来ってどんなかたちをしてるか知ってる?
未来はね とてもやさしい顔をしてる
未来はね 長くてきれいな髪をしてる
そう きみが未来なんだよ




[winter]

ふゆのきと書いてひいらぎ
ぎざぎざのはっぱが
とてもいたいんだ
けれどとてもなつかしいいたみさ




[winter path]

ぼくがあるくと
ゆきのうえにみちができる

けれどすこしたつと
ゆきがすべてをかくしてしまう

ゆきみちはすこしだけ
さよならににている




[pot-pourri]

そう… 風にのった

ポプリは―

きっと…

春になる…

だから
ポプリ

いつもココロに
ポプリを


ポプリは希望…
ポプリは朝の光…

―今
そんなあなたに
あげたい…
……ポプリメント





[なあなあ]

なあなあ、誰かきいておくれよ、今夜は、誰かにきい
ていて欲しいんだよ、こんな月のきれいな晩はさ、た
とえ雨がふっていても、とても人恋しくなるもんだろ、
だってさかわいい女が隣に寝ているとするだろう、
もちろんおれの妄想だけど、その女はさ風呂上りで、
髪の匂いなんか、すごくセクシーで、だけど寝てる
んだぜ、どうするよ、夏がそこにあるんだぜ、春を飛
び越えちゃって、いきなりおれの人生、夏でいいのか
って、ちょっと悩むけど、けど人生一寸先は闇だろ、
カミオカンデの隣で暗黒物質が検出されるかも知れ
ない時代だろ、もう考えたってしょうがないわけよ、
そこでえいって抱きつこうとすると、それはやっぱり
妄想で、女の裸は画面の中だけで、勝手にあんあん
逝っててさ、こっちはもうショボーンってなってしまって、
おれの人生こんなでいいのか、って、ティッシュで拭
きながら毎晩毎晩反省するんですけど、ごめんよ、
こんな駄文読ませちまって、




[blue]

ぼくは
時間よりも深く青い空の色の
ひとみを持ち
ひとりの深みにはまっている
誰もいない

梢の花もあざやかな青です




[breeze]

このあおは雪にひそむそらなので
きっとまだともしびの戦争が足りないのだと思う

夜明けまえに流すなみだは
ちいさな部屋のちいさな悲しみのむこう
リボンの丘をこえて
透明な海岸をあすのほうへとこえてゆく

この淡い胸のいたみは
遠い水晶にふきあれる青い嵐なのだろうか




[so much lonely]

とてもさびしいので
涙という文字を百回書きました

とてもさびしいので
流れる雲の数を数えて眠りました

とてもさびしいので
小鳥になって夢の中で飛んでいました

とてもさびしいので
めざめるとつめたいあおぞらがひかっていました




[永遠の端くれ]

灰色の空から
雪が降ってくる
雪に混ざって
はるか上空から
白い羽が一枚
音もなく
落ちてきては
動かなくなった
猫の上に
とどまった

それを目撃したおれは胸の前で
ちいさく十字を切った

おれたちは
みんな
永遠の端くれなんだ




[夜は、ちいさな空が、]

夜は、
ちいさな空が、
火のように
燃える。
わたしは、
その
ちいさな
燃えさし。
夜、ひとりになると
わたしのなかで
燃える
ちいさな空を
くじら雲が
飛んでゆく。
その
はるかな
はるかな
行き先。
夜、
ひとりの部屋で。




[黄昏のおわりの瞬きに]

1
黄昏のおわりの瞬きに、大いなる怒りの光を帯びた星
雲が交差しあう天蓋にむかい、傷ついた男たちが大声で
呼びかける。その声に応じて晴れてゆく天空には、たえ
ずうつくしくしみわたる遠い霧のような花火が沈黙しつ
つ彼方へ消えていった。

2
真赤な少女たちが風のように駆けよってくる水滴に
満ちた紅い花のその名を呼べ。深い鏡を覗き込むとき
傷つくほどに満ちたあおそらにかかる金色の虹のそ
の名を呼べ。若き日において朝の世界のかわりに世界
に満ち満ちた暗黒のその名を呼べ。

3
ふるえる幻影の朝のなか、透きとおった身体をもつ妻
がうたう舟歌のつくりだす樹木や森や山ほどの喜び
の存在意味をもっているのか。砂に埋もれたままの蝉
のぬけがらほどの鈍色の存在意味をもっているのか。

4
新しいせかいにおいて地上の氷の割れる音のすぐちか
くに痩せたことばのつぼみがあり、それらをてのひら
の熱で溶かすと、ことばは水晶のうたのように蒸気化
し、朝のひかりほどのふるえる時間にかわった。




[night and day]

よる

なあ、さびしいな
さびしさが
しみるな

なあ、あれだな
よるになると
真っ暗になるのは
あれのせいだな

きっと
独りぼっちで
さびしいせいだな


ひる

透明な海で 何度も 何度も おぼれてしまうので
ぼくの 十字架は 際限なく 増殖する
ひるも ゆうぐれも あけがたも
世界は みえない毒で みちあふれてる

見る氷の秋のひかり。
カナリアの朝の蒸気。
難解な青春のあけがたをことごとく打ち砕く気層。
つきあたる女の子。
世界の毒。


よる

笑い方が よくわからないんだが
いったい おれは いつから 行方不明なんだっけ




[冬]

すきといったら
きっと
きえてしまう
悲しみの魔法
冬の底で
あたしの幻想まで
夕闇に包まれていく

ねえ風は死んでしまったの?
ねえ花は折れてしまったの?

あなたがすきなのに
負傷した悲しみが
灰になった手紙のようね




[12月]

ぼくは
で始まる詩を書き始めたら
冬のらせん階段をどこまでもおりてゆく
そんな詩になってしまう

あの日きみを待ち続けたときの雪は
まだやまない






自由詩 ぼろぼろのつばさ 4' Copyright 青色銀河団 2020-04-21 23:30:37縦
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