前夜の鎮魂歌(レクイエム)
おぼろん

死の女神が微笑む、
”どうか明るい唄を残してください、”

死の女神が唱える、
”わたしはすべてを等しく愛するもの。”

死の女神が歌う、
”ああ、死は安らかな眠り。安らかな眠り。”

死の女神が口づけする、
 すると、その者は光のようになって消えていく……。

――死の女神よ! 俺たちの悲しみを、
 悲しむ資格を返してくれ、

どうか、悲しむ権利を、
 この”人間存在”という悲しみを、

奪われてしまったそれを、
 誰かに奪われてしまった。――死の女神よ!

あなたは優しく清潔だが、
 同時に冷たく、残酷でもある。死の女神よ!

ああ、お前に……、
 ありとあらゆる生命を司る権利があると言うならば!

死の女神が優しく微笑む、
”どうか明るい想いを残してください、”

死の女神が優しく唱える、
”わたしはすべてを等しく愛するもの。”

死の女神が歌う、
”ああ、死は安らかな眠り。安らかな眠り。”

死の女神が優しく口づけをする。
 すると、その者たちは光のようになって消えていく……。


自由詩 前夜の鎮魂歌(レクイエム) Copyright おぼろん 2020-04-03 12:33:58
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