白紙のページを信じる
ホロウ・シカエルボク

おかしな時間に目が覚めて
それからずっと眠れない
閉じ込められた寝床で
脱出計画を練っている
きちがいは耳を澄まし
こそこそと覗いている
晴れるという話だが
夜明けまではなにもわからない
能天気な、高い声の
鳥が複数で鳴いている
公園で馬鹿でかい声で世間話する年寄りみたいに
いまこの世界で
いちばん大きく響くのは
俺の頭の下の枕が
落ち着きのない俺によって鳴らす音
理由のわからない車が通り過ぎる
ひところ賑わっていた街路には
人の声はまるでしていない
誰もいないのか、あるいは
全員が一人で歩いているかだ
ステレオのボリュームを少し落として
スピーカーは息を整えてる
このまま起きてしまおうか、と
少しの間思案したが
そんなことをしてもなんの得もないだろう
真昼間に眠くなるだけのことだ
脱出計画は難航している
効果的な意見を吐く参謀がいない
思えばずっと
標識のない
指針のない
コンパスの壊れた時を生きてきた気がする
常に混沌と、困惑をしている方が
自分自身であり続けようとするものだ
そういうわけで会議は解散となった
やれやれ、と連中は散らばっていった
俺は寝返りを打った
枕が津波の真似をした
少し大きな車が通り過ぎた
音楽は鳴り止まない
心臓が動き続けているうちは


自由詩 白紙のページを信じる Copyright ホロウ・シカエルボク 2020-04-02 22:08:03縦
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