春になると
丘白月

春になると思い出す
初めて逢った新学期

あなたの後ろが私の席
そっと背中の糸くずを取った

窓辺の席であなたの制服は
キラキラ黒いダイヤのよう
春の日差しはなにもかも
希望しか見せなくて新鮮だった

同じクラブに入って
同じ時間を過ごしたね
会話はなくても
いつも一緒に笑っていたね

グループで帰った満天の星空
いつの間にか好きになっていた
何も疑わない日々
このまま一緒に時間を過ごせば
私だけを見てくれる気がした

桜が中庭の池に映る
桜が水面の自分に語りかける
妖精が桜色の水面を歩く

私には見える
見えた気がした

あなたは信じるかしら
そう思って
桜色の薄い淡い恋が
心のなかで動き出していった


自由詩 春になると Copyright 丘白月 2020-04-02 21:27:25
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