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大村 浩一

元日に歌番組見て笑った男が
2月発症して傷害で拘束
3月には物言わぬ骸に
嬉しげに報じる記者と
嘲り溜飲を下げる視聴者らが
彼に支払う対価は幾らだ


2月節分の豆を撒き
3月雛祭りを祝った娘が
11日の津波で帰らない
親でも代理人でもない
視聴者らが教師をなじる
教師に支払う対価は幾らだ


敬老会の会場で右足骨折した母
4月施設の居室で下腿をまた骨折
この3月は左足を5針縫った
医者通いのタクシーや怪しい薬代
散財を強いる世間と私に
母が支払える対価はあと幾らだ


岩を殴れば拳が裂ける
痣を笑えば痣付けられる
作用と反作用が分かるなら
支払いは当然 用意してるね?


9年前の11月
1才の娘と妻とともに故郷へ
震災や被爆を運良く逃れ
9年続いた静かな安寧に
いま濃い影が忍び寄ってくる
こんど私が支払う対価は
一体幾らだ


2020/3/25 初稿 大村浩一


自由詩 Exchange Copyright 大村 浩一 2020-03-25 22:58:53
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