春に沈む
たもつ


人が沈む
沈むのに言葉はいらない
臭い肉体が一欠片あれば良い
沈む先が行き先
水底ならばそれだけで幸せなことだ
ただ沈め
美しい時代もある
酷い時代もある
すべては時代が理解してくれる
吉田屋の水羊羹は食べたかい
あれは美味しいよ
身体の一番遠い所まで甘さが行き渡る
生きている気持ちになる
それなのに人はまだ
命の重さすら正確に量れない
もうすっかり一面の春だ
乗り物置場に新しい乗り物が置かれていく
固く握ったそれが希望ならば
決して手放してはいけない
どんなに小さくても
いつか免罪符になるのだから
言葉など無くても
饒舌にただ沈め
沈もう



自由詩 春に沈む Copyright たもつ 2020-03-23 19:50:39
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