夜の月が祈りのかたちを照らすとき
かんな

いたみから
目を背けられない夜の月のような
白く甘いこどくと
カップの底に残ったままのココアは
あの手が握りしめたやさしい日々の
ちいさな祈りをいくつも
いくつもつないで

告げることの
知らない苦しみを
本棚の傾きだけが
崩れないまま教えてくれるから
窓辺にしあわせをそっと
置き忘れたままきらきらきらきら
それは
きっと水のように生きつづける

やさしいひとはつよいひとは
きずつかないひとは
かなしいひとはよわいひとは
きずつけたがるひとは

伝えることは
この夜のおわりまで耐えていけるという
あたたかな眠りを明日まで運んでいくための
わたしの祈りのかたち


自由詩 夜の月が祈りのかたちを照らすとき Copyright かんな 2020-03-23 11:52:29縦
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