踏み切りの前で
こたきひろし

生きている道
生きていく道

途中踏み切りにぶつかる事は何度もあった
無情に遮断機がおりているときは
じりじりと待たなければならず
運よく遮断機が上がっていても
慎重に渡る必要があった


踏み切りの線路の上は陽炎が揺れていた

人身事故の為に
踏み切りの線路の上には千切れた肉片がこびりつき
血液がまとわりついていた

踏み切りは満開の桜の森に埋もれてしまった

何も起こりそうになかったが
金木犀の香りで気が狂いそうになった

生きている道
生きていく道

途中何度も踏み切りにぶつかった
ある日
遮断機がおりたまま開かなくなってしまった

そこを通るのを諦めて他の道を選ばなくては
ならないのか

踏み切りは閉まっているだけで
電車は来る気配はない

迷った末に
踏み切りを無視して
線路内に浸入しようとした

何もかも嫌になって
何もかも
絶望して
はいけない

踏み切りの前で踏みとどまった

生きている道
生きていく道
生きなければ
ならない道だから


自由詩 踏み切りの前で Copyright こたきひろし 2020-03-14 07:37:40
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