ノイズ
こたきひろし

人生の負け犬も
人生の勝ち犬も

最期は一緒だよ
ダスターシュートに落とされて
焼却炉まで運ばれて
燃やされるのさ

果たして俺はどっちだよ
負け犬か
勝ち犬か

人生の負け犬がコンビニで菓子パン賈って飲み物賈って
寒空の下。コンビニの駐車場の隅に座り込んで食べてたら寒気するな。

人生の勝ち犬がコンビニでサラダチキンとカフェオレ賈って
同じ寒空の下。同じコンビニの駐車場。高級な外車の運転席で食べてたら、それも寒気するな
たとえ助手席にとびきりの美女を乗せていたとしても。

俺は世の中の底辺ばかりを這いつくばって生きてきたのさ
だからと言って
宿無しの野良の犬になった事はねぇよ
なりかけた事は何度もあったけどさ。

腹を空かしてクウクウ哭いて
吠える力もなくなって
それでも這いつくばって
何とかここまでたどり着いて来たのさ。

心に穴が空いちまった
隙間から入る風を冷却して
世の中に吐き出している。

嫌われ者さ
この社会に掃いて捨てるくらいいるうちの
一人だ。

夜中にラジオを聞くのが好きだ
演歌を聞くのが好きだ
詞がいいよ
まさに職人芸だな
聞き惚れて
涙がこぼれるんだ。

でもよ
安物のラジオだから
ノイズが入るのよ。

それがまたいいんだな
それがまたいいんだよ。


自由詩 ノイズ Copyright こたきひろし 2020-03-07 08:56:54
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