缶切りがない
カマキリ








風通しのいいこの部屋は
なにも考えられなくなる
昨日飲み干してしまった
感傷とかそういうのが
妙な日当たりによって
いつもよりきれいに見えてしまうんだ
何度か空っぽに対して
納得するように頷いたあと
しびれた足を持ち上げながら
言葉通り丁寧に窓を拭く
それでよかったわけじゃあないけれど
駆け上がる気持ちに蓋をしたいんだ
それがダメならせめて
思い出に連れて行ってくれ
だってこの部屋には缶切りがないもんだから


自由詩 缶切りがない Copyright カマキリ 2020-03-05 00:46:48
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