駅に落ちていく
たもつ



駅に落ちていく
そう言って笑った父方の叔父
さっきから肩があたっている
どうしたら落ちていくのだろう
父方の叔父、ねえ、叔父さん
夏の早朝の駅舎
点検する若い駅員
駅に落ちていく叔父
さっきから肩があたっている
駅から徒歩圏内の叔父の生家はいつも
消毒薬と人の匂いがしていた
父の生家もその生家だと思うと
父までもが駅に落ちていく
おまえのお父さんはね
いつもの三つ目くらいの話が始まり
そこから先は可哀想に
父には何もない
駅ってそういうものだよ
美味しそうに、パフェ、食べてる
生きることばかりに詳しくなっていく
さっきから肩があたっている



自由詩 駅に落ちていく Copyright たもつ 2020-03-03 19:27:28
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