西陽
たもつ

 
 
薄色の電車
駅に着くたびに
肋骨を触って
遊んだ
指先に水滴が集まって
見ていると
きれいだった
お父さんが、いい、
と言ったから
遊び続けた
手やその先が
優しい人だった
お父さんを押すと
車窓からの西陽に
少し動いて
戻ってくる
電車に似た薄色の駅
お父さんは
一人降りた
捨てられた、とか
忘れられた、とか
ではなく
置いていってくれた
そう思う
何もかもが
あの頃は
すべてだった
 
 


自由詩 西陽 Copyright たもつ 2020-02-29 18:20:35縦
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