逢うべき者は誰
非在の虹

死が個々の匂いを失って、
腐乱という可視光線の屈折が、ただ
広々としたコンクリートの壁にその染み
ともならず、うつり行く走馬灯の懐かしみにも馴染めず
哀れにも雨曝しの自己の内部へ突っ込む。

何者か?何者なのか その堕ちる人は。
日暮れて松葉牡丹の葉陰に落ちるハンミョウか?

混乱する朽ちた肌えに
未だに接吻できず、上空に翻弄され涙する。
誰に逢うのか?
誰に逢うのかもわからず、絶海のみどりの小島
海面に突き出た椰子科の植物のそのあまりに苦い水
の滴りに今生の涙を流す。


自由詩 逢うべき者は誰 Copyright 非在の虹 2020-02-21 20:08:16
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