浴室の鏡
秋葉竹



青いタイル張りの
浴室で
貼り付けた鏡は不可逆にまで曇り
あたしの顔が見えなくて
泣いているのか
笑いをこらえているのかも
わからない
灰色がたちこめる世界だ

湯をかけてやっても
ダメなものだから
あたしも一枚の
ブルーのタイルになる
二月二十二日

そこにはやはり
目に見える
十字架が突き刺さっていて

ほかの三つの二は実は
君とあたしと
夜の君
三人の照れた笑顔の『ニッ』なのだ

浴槽に湯を目一杯張って
頭を突っ込んでブクブク言ってやった
あとで短く口を突いてでる
言葉と思いやりの
欠片を
いまも知っている「好きです」






自由詩 浴室の鏡 Copyright 秋葉竹 2020-02-21 15:28:57
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