ほどけないことばの結びの中で
かんな

この冬に
するすると
ほどけてゆくことばを
つむぎ合わせることを
わたしが
わたしとして母に伝えるのは
愛が
愛のふりをして
また愛のようなかたちをして
そして
愛としてのことばをつむぐこと

生きて
母は母として生きて
時に苦しみの中で死のうとすることを
わたしもずるずると
子どもとして苦しみの中で生きたことを

生きて
どうか生きて
わたしはただ母の
母のしあわせを願うことしかできずにいる
やはり子どもで

わたしは
生きていて愛が
愛のかたちをしていなくとも
生きつづけることばの
ほどけずに残ってゆく結びの中で
誰がそれを疑うのか
信じて
わたしは信じて冬を
溶けてゆくときを

ほら
そこに春が
きているからどうか呼んで
あたたかな
あたたかな声を

母は母として生きて
わたしは子どもとして生きて
ただ苦しみの中を生きて

愛が
愛のふりをして
また愛のようなかたちをして
そして
愛としてのことばをつむぐとき
生きて
わたしはわたしとして生きて

母が生きたことを
わたしが生きたことを
その愛を
ここにつむぐ



自由詩 ほどけないことばの結びの中で Copyright かんな 2020-02-17 00:49:58縦
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