詞華集
岡部淳太郎

ひらかれたまま
あつめていく
私に似たものを
私に似ていないものを
あつめて
もやして
ふたたび解き放つ
それらはすべて
私ではないもの
それでいて
私をかたちづくるもの
すでに私はいない
ということが
明らかになっている
私は頭上に広がる
意思のない空
春には草を
秋には落葉を
詩を読むように
ひとつずつ踏みしめていく
そして夏には砂を
冬には雪を踏んで
なんでもない季節には
見えない声でさえ
踏むのだろう
私は所有のない不在
あいまいにひらかれたまま
その中にかくじつに降り積もらせては
あつめていく
それでも私は傷であり
ぼんやりとした痛みであるのだが
ためらわれた解放が
しずかに決意される時
私の中にたまったものは
いっきにあふれだす
ひらかれて
ばらまかれた
この世の花弁
それをふたたび
詩を読むように
うたうように
踏みしめる
誰かがいる
あ、
あつめていく
世界は広い



(二〇〇九年四月)


自由詩 詞華集 Copyright 岡部淳太郎 2020-02-09 18:36:14縦
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