正と負の重さと軽さ
こたきひろし

ありきたりだけど
俳句は松尾芭蕉がいい

ありきたりじゃないかもしれないけれど
歌人は山崎方代が好きかな

詩人は誰も思いあたらない

小説は太宰治なんて言わない
芥川龍之介が好き
「芋粥」を読んで感動した
それに五木寛之がいい
「朱鷺の墓」に切なく興奮させられた

私は文学少年から
文学青年になり
文学中年をへて
今はただの文学好きな老人に
なってしまった

今日の私は
晩年のうちの一日に違いない

だからといって
縁側で日向ぼっこなんてしていられないよ
負が付きまとって離れてくれないから

産道から抜け出て
その体から羊水を洗われた日
の事は何も覚えてないのは明らかだ

なのに
産湯ではどうしても洗い落とせなかった
負の数字には気づかされていた

負を僅かずつ減らしながら
零へと向かっている
今も途中だ

なんてね
何となく解ってきたんだよ

負の重さ
そして正の重みのなさ


俳人は松尾芭蕉がいい
歌人は山崎方代が好き

二人に共通しているのは放浪癖

私の存在も根無し草






自由詩 正と負の重さと軽さ Copyright こたきひろし 2020-02-08 06:30:38
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