器。
マッドビースト


 一週間も社会にでていれば金曜の夜には心がカチカチなので
 硬くなった心をすこしでも揉み解そうと長くお風呂に入って
 みる。電気を消してずずっと湯船につかって口と鼻との間に
 水面がくるようにして目をつぶっているとあまり長くつかっ
 ているものだから皮膚がふやけてそのあとから自分の境界線
 もふやけてくるような気がする。ああこんな埃っぽい入れ物
 なんかおさらばで無形流形の水になって滑らかに生きるぞと
 思って溶け出すとこんどは四角い湯船の端で行き止まりだ。
 なんてこった今度の形は直方体で前より角がたつじゃないか
 と残念やら呆れるやらしょうがないからもとの入れ物に戻っ
 て風呂からあがってしぶしぶ戻ってくると彼女は粘土で作っ
 た翼を僕のパジャマに着けて待っていてくれてそれを着させ
 てくれる。まぁそんなものをくっつけているともちろん寝心
 地がわるいのだけれどもいつもよりはよく眠れて心もちょい
 と柔らかくなるので朝にはちょいと抱きしめてみたりもして
 こんなことできるこの入れ物もなかなかいいと思いもする。


未詩・独白 器。 Copyright マッドビースト 2005-04-09 14:40:09
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