お通夜
たもつ

 
 
お通夜があって
みんな傘を忘れている
窓の外には古くからある市場
誰かの窓にもあるだろう
県管理国道から小道を進み
みんな歩いて進み
本当に歩いているから
誰もが参列者になる
海の近くでは建物の維持費も大変だろう、と
訳知り顔で太った男の人が言う
この男が何を知っているというのか
人の命は模造紙のように壊れる
模造紙の何を知っているのか
喪主の女性が呟く
側にいた子供がそれを再現するように
晴れて良かった、と言う
みんな傘のことなど忘れている
イミッジすらない
 
 


自由詩 お通夜 Copyright たもつ 2020-02-02 19:52:04縦
notebook Home 戻る  過去 未来