メモリーボックス
こたきひろし

結婚式の披露宴なら違和感ないけど
いくら自宅葬とは言え葬儀の模様をビデオ撮影するなんて、常識から外れた行為だ

確かに母親の最期を映像に残して後に鑑賞しながら故人の思い出に浸りたい気持ちは理解できなくもない

だからといってそれを現実におこなったら
死者の尊厳を損なうだろう

私の姉の長男は
つまり甥は喪服の姿で何の躊躇も見せる気配もなくビデオカメラを回していた

果たしてそれが私の姉である母親の言い付けなのか
それとも彼個人の意思なのか
わからなかったが
周囲は不思議と誰も咎めなかった

メモリーボックス

私の記憶に或いは精神に破綻の兆しがなければ
あれは間違いなく現実にあった事だ

そのビデオ映像を再生鑑賞した記憶は皆無だが


自由詩 メモリーボックス Copyright こたきひろし 2020-02-01 08:17:55
notebook Home 戻る