Physics Note 2
AB(なかほど)


13

ぼくのこころは
ふ 
ってはずれて

べっくうさんやのほうに
ぷかり ぷかり
とんでった



14

喧嘩太鼓の音に
いくつもの魂がひとつになって
一際高い火柱になって昇ってゆく

ひとつぐらいは
誰かの竹ざおに
ぶらさがったままでもいいのに



15

こんな日は
街の灯がまたたき始める頃には
早くお家に帰ろうと思うのだけれど

僕らのカラータイマーの単位は相対的で
そんなもの付いてないのが本物だよ
とつぶやきながら



16

不思議な人が
一億個の不可思議を抱え
目の前でにっこり笑った

おはよう おはよう
僕も君にとっての
不可思議のひとつでいい



17

朝届いた君の事を告げる手紙が消えた
ノックはしなかった
答えもなかった

いつまでも
何もない
という思い出だけが残った



18

「ぼす」あの頃のあなたは
夕陽を見ながら
コーヒーカップ片手に

夕焼けと同じぐらい
とんでもなくきれいな
公式を導いた



19

ねえジミー、ちょうどその頃
ホワイトオークリバーにも薄い氷が張って
渡り鳥がその上を歩いていたんだ

僕の心はその氷の上で
静かに横たわっているような気分で
ときどきミシって音がするんだ



20

時折、君の手を引きながら思う
遠くの空の下の世界を
ひとつに繋がっているはずの世界を

君たちも、足並みはそろわされなくてもいい
もっと高みへ、もっと深くへ、光が
求めるものの心へ降り注ぐようにと



21

向こうのひとと思っていた
向こうの世界だと思っていた
よくわからないまま手を振った

まだ会ってもいないのに
さよなら
    って



22

"i"
ちなみにこの時間単位は比喩であって
実質的にはなんの意味も持たない


"i"
つまり君の時間と僕の時間を掛け合わせると
未来ではなく過去に向かって行く



23

しろとおもっていました
はいをゆきにまきました
とけてなくなることはないのです

そのしみに
ああ 
とこえがもれました



24

夏休みの友の裏表紙に書いた
落書き程の真実に
ちゃんと生きている って言ってみろ

遠くの歓声が聞こえる
よりも早く
感じて






自由詩 Physics Note 2 Copyright AB(なかほど) 2020-01-31 20:44:06
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