教室
たもつ

 
 
木立ちを抜けていくのが
私たちの木立ち
だからすっかり抜けてしまうと
教室がある
先生は、と先生が言うと
先生は、と復唱する私たち
やがて始業のチャイムが鳴り
つまりそれは
今までの授業は何だったのだろう

昼間、給食が波のように押し寄せ
波が給食のようにほぐれ
午後には風やそれ以外も吹き始める
犬に形の似たものを答えなさい、という設問に
覚えたての母の名前を書いた私の答案は
二度と返ってくることはなかった

先生は、(先生が)
先生は、(復唱)
教室から木立ちを抜け
木立ちはすっかり抜け落ち
後は延々と水みたいに坂道が続く
祈り、という言葉を簡単に使ってはいけません
と先生に注意された私たちの祈りは
本物や偽物よりも多分ずっと儚い
 
 


自由詩 教室 Copyright たもつ 2020-01-21 21:40:24
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