風景を食む
帆場蔵人

ひとつの風景の動きが
瓶に詰められてゆるやかに
はっこう、していく

風景は酵母となり詩情とざわめき
月明かりが窓から注がれて神々の手が
攪拌を始めれば乳白色の神話の海になる

言葉に掬い上げられ幾層にも重なり
地となり山となり、形作られる生命の糧に
意味が火をつけて焼き上げていくのだ

狂おしいほどの空腹を、生という空白を
埋め立てていく、追い立てていく、そのとき
生きているのだ、発光しているのだ

てらてらと艶めき焼きあがった詩の
三日月を齧りとる、夜がゆき朝がくる



自由詩 風景を食む Copyright 帆場蔵人 2020-01-20 17:27:34
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