ツギハギだらけ
帆場蔵人

剥製を買ってオオカミの剥製を飾って
接ぎ目すら感じ取れない毛皮を撫でる
この世は継ぎ接ぎだらけの嘘ばかりだ

おべっかも愛想も
営業スマイルも苦手で
だけれど避けることも
出来ずに皆が笑みを
忘れていった

犬も笑うのだという
人間と同じように口角をぐっ、と
引き上げて笑い声をあげるのだという
舌を出して歯をみせて耳を垂らして
せわしく尻尾を振っている

オオカミの牙よ
そんな犬を
切り裂いてやれ
忘れてしまったのは
獰猛な笑みだ

僕の牙はヤワな犬歯だ
獣の名残りと撫でても
人の歯で、犬、の歯だ

剥製を飾ってオオカミの剥製をなぞって
牙に触れるとき獰猛な笑みと咆哮になる

ツギハギだらけの身体がほどけていく

嘘に嘘を重ねた自分自身こそ
オオカミの牙、獰猛な笑みと咆哮が
切り裂き、喰むべきものだった

剥製の接ぎ目をさぐる夜に虚飾を剥いで
継ぎ接ぎだらけの狼になるのだ


自由詩 ツギハギだらけ Copyright 帆場蔵人 2020-01-20 00:46:24
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