点の誘い・線の思惑 ニ
ただのみきや

モデル

マネキンのようにスラリとして
颯爽と 人前を歩く
絵画や彫刻の面持ちで
料理を盛る皿よりも大切な役目を担う

 これを着たら
    あなたもわたしのよう

美は憧れであり 夢は
醒めるまで現実
解ってはいても楽しいもの

一部のセレブのものから
庶民のものまでいろいろだが

見つめるだけなら赤いリンゴ
たべるなら白い果肉を



視力裂果

朝に組み敷かれたまま
光と影だけを纏っている
雪の深さを 長靴で測る

迸る息がマスクを濡らす

見つめるより 雪は
目を瞑るほうが白い
斑な闇の向こうに開く
澄んだ瞳の見る白銀がある

時計は時間の長さを計るが
時間の深さを測りはしない



わたしたちのやりとり・一

それは跳ねあがる魚であり
投げ込まれる指輪でもある
一瞬水面の上と下を混濁させる
水琴の音色
波紋が覆う
やわらかな鏡の虚像を隅々まで



わたしたちのやりとり・ニ

二人はこうして一つの花を見ているが
 それは異なる花の姿で
今日こうしてわたしたちは出会ったが
 その今日は別々の日で
こうして話しかけるわたしの声も
 あなたの声でしかない



 
                《2020年1月18日》










自由詩 点の誘い・線の思惑 ニ Copyright ただのみきや 2020-01-18 12:34:30縦
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