ひとの背中に書かれた文字を
千波 一也

ひとの背中に書かれた文字を読めていたならば

放ってはいけない言葉を慎めたかも知れないけれど

触れてはならない傷を避けられたかも知れないけれど

読めないほうが幸せだと信じていたい



ひとの背中に書かれた文字を読めていたならば

どんな願いごとを秘めているのかが明るみになるけれど

どんな期待を背負わされているのか明るみになるけれど

読まれないほうが有難いに決まってる



ひとの背中に書かれた文字を読めていたならば

ひとのこころを知るための道のりは易しかっただろうか

それともそんな道ごと消えてしまっただろうか



ひとの背中に書かれた文字を読めていたならば

わからないことに悩まずにすむ喜びが待っていただろうか

それとも喜びなどは失せてしまっていただろうか




自由詩 ひとの背中に書かれた文字を Copyright 千波 一也 2020-01-17 13:16:56
notebook Home 戻る  過去 未来