立見春香

わたしの瞳は小さい

つまりはそういうことで
人の気持ちがわからないから
優しい人からも、恨まれたりしていそう

静かな冬のお寺に
昔よく遊んだお地蔵さまがおひとり
孤独を怖れない、石の意志を持って
みる人を幸せにするほほえみを
うっすらと、刻んでいる


昔々の、ことじゃった

なにかと慌ただしい
その冬の、年の瀬のことじゃった
彼との終わりなき
愛と、憎しみと、嫉妬と、懈怠に、
疲れ果て
すがりつくように
このお地蔵さまを
拝んだときの

ことじゃった

答えはすぐに、出たのじゃった

そして今はもうその答えに
従ってあれ以来
一度も会ってないのじゃった


まるで心を無くしてしまったみたいに
くるしんだよ

痛くて痛くて
なんども胸をかきむしったよ

なんにもやる気にならなくて
朝になってお日様が射しても
灰色の顔のまま
布団から抜け出せなかったよ

でもそれでも
あんな腐れ縁
続けていくよりかは
マシだと言われた気がしたので

お地蔵さまに

だから
信じたんだよ

わたしは体が小さい
小さくて
保護を求めているように
見られてしまう

おまけに心も小さい

そんなもの
どうでもいいというのに

わたしの瞳が小さいのは
大きな視野で物事を考えられないから
ほんと、
そんなもの、どうでもいいに
決まっているわ

決まっていると
思っているのに







自由詩Copyright 立見春香 2020-01-12 09:36:40
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