詩にうつつを抜かしている
こたきひろし

昨夜遅く何のまえぷれもなく
母親があらわれた

彼女と最後に会ったのはいつだったか
彼女と最後に別れたのはいつだったか

薄情にもそれを忘れてしまった
十年か二十年か、それさえも分からなくなっていた

いずれにしても
どうしようもなく歳をとっている筈だし
老醜をさらけ出しているに違いない人は
別人としか俺の眼に写らない女人と化していた

腰を抜かす位に若返っていたのだ

俺の眼は先ずいちばんにふくよかな胸に引き寄せられた
そして次に肉感的な尻に持っていかれた

ヤバイ
これはヤバイ

あれっ?俺は異変に気づいた
同じベッドの上で寝ている筈の嫁がいない

すると母親はそれを察して言った
 子さんには遠くへ行って貰ったよ

遠くって?何処だよ?
俺は直ぐに聞いた

お前には母さんがいるでしょ
彼女は答えた

それから間もなく彼女は
するりと俺の側に横たわった

ヤバイヤバイよ
それはヤバイよ
幾ら母親だってその体と色艶は
化粧もいけてるし唇は紅いし

それから彼女は着ていたブラウスを脱いできた
下着をずらして乳房を露にした

それから躊躇いもなく
その片側の乳首を俺の口に含ませた
そして彼女は言った

母さんお前には人工のミルクしかあげられなかったから、それがずっと心残りだったのよ

えっ?そっちだったのか
勘違いしたよ
よかった

あり得ない事が
けしてあってはならない事が起きる幕開けじゃなくて

母さん
遠慮なく頂くよ

母さん
目が虚ろになってるけど
大丈夫かい

死んでないよな




自由詩 詩にうつつを抜かしている Copyright こたきひろし 2020-01-12 09:26:27
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