地下室の明滅
いねむり猫

高音の反響は 
悪魔たちを招集する 絶望の神の宴
  生贄の女たちが叫ぶ 歓喜と恐怖の波長

 極低音の響き ゆるんだはらわたをゆするのは
 夜更けの広大な倉庫に集う 怪物たちの排気音

この世からの 遠い 遠い 隔たりの中で 
熱帯雨林の夢に浮かされた 熱病の額にしたたる
水滴の甘さ

 すべてを受け取ろうとする ノイズに穢れた耳は
すでに頭の上 数メートルまで 切り取られて 浮遊する

ここに反響するのは 俺たちの絶望と 鮮烈な血

研ぎ澄まされた感覚ならば もっと激しい破壊の鉄槌が
やせ細った体に 振り降ろされるはず 

それでも 砕けたからだの部品たちが
残らず その歌い手たちに 傷だらけの花びらを拡げる

そのハイトーンは 傷ついた獣が
密かに焦がれていた 荒々しい銀河への遠吠え

頭を打ちぬくパーカッションが連れ去るのは
孤独な夜道で出会った 仲間たちとの 裏切りの銃撃

孤高のギターソロは かつて危うくも燃えた
のしかかる世界への 挑戦の叫び

身体の奥の奥 鎖につながれ 
絶え間ない罵声を浴びて 
うなだれていた 青い うねりが 身震いをして
 地下室に 呼応するのは
 しぶとく生き延びた魂の明滅



自由詩 地下室の明滅 Copyright いねむり猫 2020-01-11 22:29:34
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