杳香
ナンモナイデス



深く森の闇の香りがします
行き過ぎてゆく人に言葉をかけたりします
つまらない世間話ですけれども
視線はいつも痛いものです
いくどもえぐられているような不安定な
でもそれが欺かれていたとしても
時折花よりはましだともおもいますけれど
小さく
可憐な花にほど
他者の指先は痛いものですから
なすすべも知らず
はかなく積まれ逝く
ものたちには
その残り香さえも解き放つことも
ゆるされない
ものなのでしょうか




自由詩 杳香 Copyright ナンモナイデス 2020-01-10 19:35:50
notebook Home 戻る  過去 未来