無題
朧月夜

空疎な空をかかえながら、
掌のなかに空色を握っている。

機械仕掛けの古城に、
冬の点し灯が灯るのはいつのこと?

荒野に風は吹き曝しになって、
人々にマントを被らせる。

皆希望や欲望でその顔を彩らせて、
わたしは呆けた顔を一つ首の上に乗せている。

誰もどこかへ行くことはせず、
わたしも行くあてのなさを一人抱いている。

あの、冬の点し灯が灯れば、
この哀惜を吹き飛ばしてくれるのだろうか……

君と一緒に歩んでいた時に、
その道が二人別々であったことをわたしは知っていた。

だから、いつか冬の点し灯が灯れば、
わたしは雪の中に隠されることを知っている。

誰もどこへも行こうとはせず、
わたしも一人きりでじっとしていられるのだと。

機械仕掛けの古城では、
冬越しの準備に人々が忙しい。

誰も、この荒野に流れていく空のことを、
気にも止めず、見もしない。

今、君の手に何が包まれているのかを、
わたしは考えようともせずに感じている。

いつか、春は来るのだろうかと、
君は悩み抜いているのに違いない。

この季節の果物を一つ、わたしは買った。
それを誰に捧げるでもなく、氷の柱を踏んでいく。

機械仕掛けの古城に、
冬の点し灯が灯るのはいつのこと?

空疎な空を見据えながら、
掌のなかの空色を持て余している。


自由詩 無題 Copyright 朧月夜 2019-12-23 12:35:40
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