冬を歩く幻想
帆場蔵人

庭の木も街路樹もすっかり
葉が落ちさり手をひろげて
雪を待ちかねてざわざわと

さぁ、おいで、雪よ、おいで
歌いながら風を掬い夜を掬い
全身で冬の夜空を受け止めて

君は僕の手をひいてその木立ちを縫っていく
僕は君の手にひかれ、木立ちの歌を聴いてる
雪が降るまでにどこまでいけるだろう

雪が待ち遠しいと思いながらも
朽ちかけた落ち葉を拾いあげて
繋いだ手の間に縫いこんでいく

ひとつの季節の幻想がひとつになれない
肌膚の間で編まれ街路樹を縫い続けていく
雪が降るまでにどこまでいけるだろう

ぽつりぽつり、と
浮き上がる街灯が
幻想を打ち消してしまう
工事現場の誘導員が
僕らを日常へと誘っていく、夜の街角
マンホールの蓋がズレている

あそこには辿り着けないんだ
街灯のなかを当たり前に歩いて
ほら、雪が降り始めた

コンビニで缶コーヒーを分け合いながら
僕らはどこまでもいけはしなかった


自由詩 冬を歩く幻想 Copyright 帆場蔵人 2019-12-22 23:21:06縦
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