光を嗅ぐ
たま

冬の入口で
RENの骨を拾った
十六年のいのちだった
夏毛のまま
逝ってしまったRENの
体温が残るこの手が淋しくて
白い子犬を抱いた

DANSKE、と名付けた

も吉と歩いたあの道を
RENと歩いたあの道を
もういちど
DANSKEと歩くつもりだ
でも、これが最後の道だよ――。
そう言って
北の亡者は笑うだろうか
まったく、懲りない男だ

いつもの公園の
朱色した桜葉の
幾重にも塗りつぶされた歓びと悲しみを
白い子犬は踏みしめて
芯まで冷えた
光を嗅ぐ

DANSKE、これが冬なんだよ――。
北の亡者の声を真似て
懲りない男はそう言うのだ
できることであれば
いや、
どうしても、生きなければいけない
残された時間がどうであれ
朱赤に染まるまで
生きなければいけない

冬の光を嗅ぐ者だけが
幾重にも染め上げられた枯れ衣を
この空に
解き放つことができる
それができないわたしには
この子のいのちが必要なのだ

色づき始めた人生の
すべてを解き放つために
DANSKEと歩く
残り僅かな、冬が必要なのだ











自由詩 光を嗅ぐ Copyright たま 2019-12-09 15:30:34
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