寂びる
帆場蔵人

フレームだけを残してフロンティアが
朽ちている、錆びたフレームを隠すように
蔦が這い、忘れられた、いろかたち

老人が指差す、そこが境目だと
フロンティアがあったと、かつての
開拓地を指したのか、そんな車が
あったのだと言いたかったのか

誰かの空間を越境して切り取り
誰のものでもない空間に線引きして
切り取り、所有する、足跡たち

境目に足を踏み出したとき、の
境目を線引きしたとき、の
フロンティアのいろかたちを

人びとは覚えているのか
その歴史を、その物語を

境目のフロンティアが朽ちていく
フレームすら緑にのみこまれ
忘れられていく、いろかたち

木洩れ陽に陰と混ざり合い
誰のものでもなかった時間を
おもいだしている空間の、夢うつつ


自由詩 寂びる Copyright 帆場蔵人 2019-12-07 03:09:19縦
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