K電車
AB(なかほど)


今日のK電車はゆれる
こんな日に限って
いつも以上にゆれてる
ゆれてなんぼなんやろか
ゆらしてなんぼやろか
こころは、こころは
かっくんって
こころが、こころが、
かっくんって

川崎-横浜間で
君の顔が浮かぶ
とりあえず昨日は去って
明日がやってくる
間も無く「   」が通過します
間も無く「   」を通過します
どこから私ですか
どこから今日ですか
君はいつですか
通過します

個体発生は系統発生をたどって
夕陽があらぬところに射し込むと
新しい何かが始まるかもしれない
かもしれないでは何も
何も解決できない
かもしれないけど
ほどけた点に射し込む
光や眼差しや言葉や温度が
編み込まれてゆくのかと
あの人に似ている影を追う
それは若い姿の父と母か
まだ幼いころの自分か
探しているつもりはなかった
探しているつもりはなかった
かもしれない
なんて

三崎口行きに乗り込んだとんぼは
電車と僕と同じ速度で
すいとする
同じ状況を
相対速度で穏やかに説明してた先生
のことは好きだった
久里浜で降りた君は文庫に帰れるのかな
百の眼に映る知らない景色は
楽しいかい
すっかり乗り過ごした僕も
すぐに引き返す気にはなれない

今日もKはゆれている
こころは、こころは
かっくんって





自由詩 K電車 Copyright AB(なかほど) 2019-12-06 07:46:24
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